「晴れわたった今日の天気に、わたくしはかの人々の墓を掃いに行こう。落葉はわたくしの庭と同じように、かの人々の墓をも埋めつくしているのであろう。」
作家永井荷風の作品、「?東奇譚」の一文です。
エレファントカシマシの歌詞はほぼ宮本浩次によって書かれています。
永井荷風や森鴎外などの文豪の書を愛読していたと言う宮本氏。
その影響は大きく、歌詞からはその独特な死生観や俯瞰を見て取ることができると思います。
ときにはストレートに、時には暗喩が込められていたり、単純に言葉遊びだったりするかもしれません。
それは聴く側によって色々な解釈がされるでしょう。
多分どの解釈が正解などとは言えないと思います。
それでも、その一考の価値のあるエレファントカシマシの歌詞。
武骨で荒々しいロックと繊細な心情を語る文学。
この一見相容れない物を見事に融合させたエレファントカシマシ。
そんなエレファントカシマシの心に響く歌詞をランキング発表してみたいと思います。
エレファントカシマシの心に響く歌詞ランキング:第10位~第4位
第10位.「デーデ」
デーデ
エレファントカシマシ
ロック
¥250
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発売日:1988年3月21日
収録アルバム:エレファント カシマシ
「悲しい事があっても 一人きりになっても
金があるじゃないか 金があればいい」
のっけからストレートですみません。
エレファントカシマシのデビュー曲ですね。
割り切って考えれば「うん。その通り!」と納得してしまいます。
けれど「世の中、金じゃねえだろ!」と思ってしまうのも事実。
少しひねくれた表現がロックしてます。
年齢を重ねると「いや~若いねえ~!」などと上から目線で言ってしまいそうですが、何十年も前から変わらない世の中の現実。
そして変わらぬロックンロール。
第9位.「化ケモノ青年」
化ケモノ青年
エレファントカシマシ
ロック
¥250
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発売日:2004年3月10日(シングル)
収録アルバム:扉
父 「おい今夜は酒もってこい いいから酒もってこい」 (中略)
バケモノ青年 「『あらお父さん、今夜は機嫌が悪いわ』と母は思っただろう。」 (中略)
あの19世紀以来 男の歴史とは己のイメージと相克の歴史
まるで小説を読んでいるかのような歌詞です。
遥か昔から変わらない「男」の存在。それを「バケモノ青年」に置き換えて表現しています。
酒を飲む父。呆れる母。それを見ているバケモノ青年。
しかし、父も昔はバケモノ青年でこのバケモノ青年もいずれ父になる。繰り返されるわけです。普遍的な内容を綴っています。
他に類を見ない貴重な歌詞だと思います。
この解釈、間違っていますかね?しょうがない。やりなおしっ! 酒もってこい!
第8位.「寝るだけさ」
寝るだけさ
エレファントカシマシ
ロック
¥250
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発売日:1988年12月9日
収録アルバム:愛と夢
「大したことはありゃしないさ 真実そのままでいい
ああ あとは寝るだけさ 寝るだけさ 寝るだけさ」
打って変わってリアルな言葉で書かれた歌詞です。
こういった言葉の落差もエレファントカシマシの魅力の1つですよね。
この曲は特に飾り立てる言葉もなくシンプルで、聴いてホッとします。
ちょっと昭和歌謡っぽい曲調もイイ感じです。
そういえば宮本氏も昭和歌謡世代ですよね。昭和バンザイ!
第7位.「うつらうつら」
うつらうつら
エレファントカシマシ
ロック
¥250
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発売日:1989年8月21日
収録アルバム:浮世の夢
「何をしよう浮世の夢 ふさぐ 日々をふさぎ聞いている
ああ ひとり部屋の中で ああ うつらうつら」
のどかな歌詞ですね。
一部を抜粋して歌詞を紹介したのですが、この歌詞の前後では小鳥がさえずっています。
あらら。ただ単純にその情景を歌っていると思うのですが、やはり古詩を読んでいるような感じがします。
もしかすると白日夢なのかもしれません。
じっくりとこの歌詞と向き合えば、自ずとその心境は読めてくると思います。
しかし、曲を聴くとひたすらシャウトしているので混乱します(笑)。
第6位.「偶成」
偶成
エレファントカシマシ
ロック
¥250
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発売日:1990年9月1日
収録アルバム:生活
「我が命尽きる その日が来るまでに 時は我が血を吸い身を削り
生活手にす遑も無きがままに (中略)
俺はこのため生きていた
ドブの夕陽を見るために ドブの夕陽を見るために」
「偶成」とは偶然に出来上がること、たまたま心に浮かんで出来上がることだそうです。
そういった意味で捉えれば、偶然にしてはあまりにも素晴らしい歌詞に脱帽です。
やはり独特の死生観が表れている名曲です。
永井荷風、太宰治、夏目漱石などの文豪たちもやはり「死」に対してそれぞれの価値観をその作品の中に残しています。
突き詰めれば辿り着く最後の局面ですからね。
そういった作品を愛読していた宮本氏ならではの「死」に対する解釈の一部分でしょうね。
それが垣間見える作品だと思います。
淡々とギターで弾き語る曲調もまた歌詞を引き立たせていて、フォークソング初期の高田渡氏や友部正人氏のような感じもします。
「ドブの夕陽を見るために」 印象的なフレーズですね。
第5位.「歴史」
歴史
エレファントカシマシ
ロック
¥250
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発売日:2004年3月31日
収録アルバム:扉
「歴史・・・青年期あらゆる希望を胸に、いきりたって人に喧嘩(論争)をふっかけた鴎外。
(中略)小説家森鴎外が俄然輝きを増す。彼は負けたのだろうか?男の生涯、ただの男 になって死に様を見つけた。」
森鴎外の一生をモチーフにした作品。
これをそのまま歌詞にしてしまうセンスは驚きました。
森鴎外が引き合いに出されていますが、宮本氏の自分自身への自問自答の様な気がしてなりません。
要らぬ世話ですが(笑)。
要らぬ世話ついでに多分この曲をリリースした頃というのは、40代を目前にしていた頃で、やはり生き方とかちょっと立ち止まって考えてしまったのではないでしょうか?
そう考えると、この曲に限らず収録されているアルバムの曲全体がグッと身近に感じたのです。
されどやっぱり要らぬ世話?
それはさておき、この文庫本の後書き解説のような歌詞がどう歌われるのかと危惧しましたが、しっかりロックしてて秀逸です。
第4位.「おかみさん」
おかみさん
エレファントカシマシ
J-Pop
¥250
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発売日:2009年4月29日
収録アルバム:昇れる太陽
「2100年 宇宙旅行 空気清澄 自動歩行器
おかみさん 布団干す 南向きに 布団干す
ヘイヘイエイ 胸には敗れし野望
ヘイ おやじさん あんた辛抱強いな 進歩しねえな」
ハイ。まったく進歩してません。
かえって後退しております。
言葉遊びのようにも見える歌詞ですが、これもまた的確に人々の生活を俯瞰していると思います。
近い将来どんどん便利に快適になるでしょう。
見た目にはお洒落でスマートで。
しかし、実際の人々の生活は変わらないでしょうね。
おかみさんは布団を干し、おやじさんはああしたい、こうなりたいといった夢もあったけど、今は色々会社で我慢し、家庭で我慢し耐える日々です。
でもまぁそう言われると昔からそうだし、それが日常なのかなとも思いますよね。
落語のような歌詞で面白いと思います。
たかが人間、されど人間。 おあとがよろしいようで。
さて、エレファントカシマシの好きな歌詞ランキングはついにここからトップ3です!
どんな歌詞がランクインしているのでしょうか?
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