第88回アカデミー賞の作品賞と脚本賞のダブル受賞を果たした『スポットライト 世紀のスクープ』。
社会派ドラマだけあって、ノミネートされた他作品と比べると地味な印象がありましたが、受賞にも納得の作品でした!
映画「スポットライト 世紀のスクープ」のあらすじ
2001年の夏、新聞社ボストン・グローブ紙に着任した新しい編集局長から、ある神父による性的虐待事件を掘り下げる指示が出される。
カトリック教徒が多いボストンでは、教会が絡んだ事件は触れてはならないタブー。
そのタブー解明を命じられたのは、極秘調査に基づく特集記事欄「スポットライト」を手掛けるたった4人の記者たちだった。
ネタバレ、というか基となった実話(原作)の真相
原作は小説ではなく、紛れもない実話。
2003年にピューリッツァー賞を公益報道部門で受賞した「ボストン・グローブ」紙の神父による児童への性的虐待及び教会による事件の隠蔽行為に関する報道記事と、その記事が世に出されるまでの経緯がそのまま原作となっております。
2002年にメディアで取り上げられたことで世界中に知れ渡ることになった事件。
孤児院や学校、教会や神学校内で、多くの神父が在籍する児童に性的な虐待を行ったことがあり、なおかつそういった行為は全世界で行われていました。
しかも不祥事を起こした神父に対し、教会側は数年ごとに教区(担当する地区)を変えたり、他国に赴任させたり、一時休職といった対処しかしておらず、裏では弁護士を通じて被害者たちに賠償金・示談金を支払い、裁判などの表沙汰にならないよう隠し続けてきたのです。
教会内の不祥事はほとんどが「タブー」とされ、黙殺されたままだった事件が、「ボストン・グローブ紙」の報道によって明るみに出され、結果世界中から被害者の声が集まることになり、教会による不正隠蔽という大スキャンダルが知れ渡ることになったのです。
教会やキリスト教、神父や信仰心という言葉や存在になじみが薄い日本では大きく報じられることはなかったため、国内ではあまり有名な事件ではないかもしれません。
「スポットライト 世紀のスクープ」感想と評価
アカデミー賞の作品賞と脚本賞をダブル受賞しているだけあって、映画のストーリーはかなり面白かったです。
事件の真相を追う記者たちの物語ですので、推理小説や刑事ドラマが好きな方は楽しめると思います。
ただ、特別なトリックや奇抜な謎解きがあるわけではありません。
被害者や関係者たちの話を聞いて回り、膨大な資料の中から関連する事項を一つ一つ洗い出す。いわば地道な捜査物語。
そんな記者たちの地味な作業を通じて物語は進行していきますが、その記者たちの行動はゆっくりと、そして確実に真相に近づいていきます。
登場人物たちが必死に事件の真相に喰らいつこうとしている様子が描かれているため、皆が信念に従っているということはしっかりと伝わり、その姿に共感ができます。
進行が滞る場面(いわゆるダレ場)も少なく、観客を飽きさせない工夫が施されているように感じました。
実在の事件・出来事をベースにした、いわばノンフィクション作品であり、過度な演出やご都合主義的な展開は極力おさえられています。
それでも真相を追い求める記者たちの情熱や信じられない事実に対する葛藤は、先に書きましたとおり、ひしひしと伝わってきます。
事件の被害者たちの生々しい証言や、訴えを続けながらも無視されてきた団体など、実在した事実の描写がしっかりとされているからこそ、作品全体にリアリティや緊張感が届いているのでしょう。
ジャーナリストよる暴露記事というと、芸能人やスポーツ選手によるスキャンダルというイメージがかなり強いと思います。
実際、日本ではそういったケースしかほとんど見かけませんしね。
しかし、中には闇に隠されてしまった悪意を表に引っ張り出そうとする人たちがいて、その姿には勇気づけられるものがあります。
劇中で特に印象に残っているシーンが1つ。
記者の一人が必要な事件資料を借りる際に、管理責任者である検事から「君の探している資料はかなり機密性が高い。これを記事にした場合、誰が責任を取る?」と問われます。それに対する記者の答えは「では、記事にしない場合の責任は誰が?」
立場に関係なく、勇気を体現した見事な返しです。
この作品のテーマや内容は他の大作映画と比べて地味なものだと思います。
それでもそこに描かれている人物たちの信念と行動、総括された「人間力」のパワーはなかなか体感できないレベルだと思います。
人間が持つエネルギーに勇気づけられる良作でした。
みんなの感想まとめ
そしてジャーナリズムを考える映画といえば「スポットライト」です。神父たちの性犯罪とそれを隠蔽した教会。巨大権力に挑んだボストンの記者たちの物語。頭をガツンと殴られたような感動です。「64」と合わせてジャーナリズムを問い直す旅路に pic.twitter.com/pCWhbaBAGH
— 小川一 (@pinpinkiri) 2016年4月23日
「スポットライト」観た。とても丁寧に作られた作品だった。グローブ紙のスポットライトチームが書いた記事が元ではあるけれど、映画はその記事が世に出るまでの過程を描いている。これは再度映画にするための取材も必要だったろうし(記事には彼らの苦労話なんかもちろんない)、脚本賞は納得。
— タミキーリ (@tamiki) 2016年4月23日
私が過敏になってるだけかもしれないけど「スポットライト」について題材が身近な話じゃなかったから共感出来なくて乗れなかったって言う人凄く多い気がするんだけど、身近な話じゃないと共感出来ないの?じゃあスパイ映画とかみんな楽しんでるのはみんなスパイだったの?それなら仕方ない。
— ゆうき (@_yuukixxx) 2016年4月19日
枢やな先生と打ち合わせ後、映画「スポットライト」見てきた。黒執事の現在の章「青の教団編」に役立つかなーという気持ちでしたが、事実の方がエグ過ぎですね! 仕事は忘れて、ただただ大満足でした。
— クマタケシ@黒執事&妖飼兄さん5月発売 (@takekumax) 2016年4月17日
オデッセイ見たとき、身内に敵がいないだけで映画ってこんなにストレスなくなるんだって思ったんだけど、スポットライトもそういう映画だった。身内は味方で全員で一つの大きな敵に向かっていく余計なストレスがない
— サカエ (@s_k_e_73) 2016年4月15日
「スポットライト」教会の抱える闇が深すぎる。。しかし凄い映画だった。こりゃ作品賞取るわけだわ。
— やま もちお (@new_yama_motio) 2016年4月23日
クライマーズ・ハイとかゾディアックとか新聞記者が主人公の映画は面白い的なイメージがあって見てみた映画スポットライト。
2時間飽きなかったけど、あるなら吹替の方が分かりやすいかな~
キャスト、特にマークラファロがめっちゃ良かったです
円盤出たら日本語でまた観たいわ— こころに剣(0w0)かがやく勇気(0M0 (@tomo_GNT0000) 2016年4月23日
映画スポットライトを観てきました。日本にもジャーナリズムがあったらよかったのに。素晴らしかったです。
— まのこ (@manoco666) 2016年4月23日
スポットライト世紀のスクープ @八丁座
報道とは、新聞とは、真実とは、正義とは何たるか。一瞬はさまれた、虚ろな顔で娘のブランコを揺らす被害者のシーンが胸に残っている。苦しい映画だった。マイクの怒りが胸の真ん中に刺さって、泣いてしまいそうだった。とてもいい演技だった。— Yuri Kahoru (@PerfumeOfLily) 2016年4月23日
そのあとは職場に移って数分だけ仕事して、目の前の映画館で「スポットライト 世紀のスクープ」を鑑賞。
なんかもう上手く書けないけど、報道の端くれにいる身としては…思うところが多々あり過ぎて泣きそうになったわ。 pic.twitter.com/h9HKG7XNGI— 番長@07700900578 (@BANCHO0216) 2016年4月23日
【映画】スポットライトとてもよかった。こういう内容の事件っ何故かアイルランドのイメージあったけど、アメリカでこういう報道のされ方してたとは知らなかったので、後半ずっと鳥肌立ちっぱなしだった。俳優陣もすごく良かった。
— 華潤 (@kakan) 2016年4月23日